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NetSuite導入パターンとその流れとは | 企業規模別の導入最適解

NetSuiteを始めとしたクラウドERPの導入は、業種・業界を問わず、非常に一般的なものとなってきました。
そのような中、クラウドERPの導入はこれまでのERPパッケージ導入とは異なる点もあり、どのように進めていくべきか、悩んでいる企業も多いでしょう。
そこで、本記事ではNetSuiteを含むクラウドERPの導入パターン・導入の流れを整理・比較します。
クラウドERPの導入は企業規模・要件に応じて、それぞれ適切なプロセスがあります。それらを概観する形で解説します。

目次

クラウドERPの導入方法

従来のERPパッケージは、販売、購買、生産、会計とこれまで業務個別に開発されてきたシステムを、パッケージ製品として1つに統合した実装済み機能を提供することで、データ一元化・リアルタイム処理を実現しました。標準機能のまま業務運用ができるのであれば、個別開発システムに比べて、品質向上・コスト削減共に大きなメリットがありました。
しかし、現実的には標準機能のまま業務運用できるケースはまれであり、大半は「要件定義(パッケージ機能とのFit&Gap調査)」→「(カスタマイズという名の)個別開発」というこれまでの開発プロセスに近い導入の流れとなるプロジェクトが一般的でした。
また、アーキテクチャの観点からは、「サーバー」「ネットワーク」「OS」「データベース」「アプリケーション」という従来構成と同様であり、いわゆる「非機能要件(セキュリティ、パフォーマンス、運用、移行といった業務機能以外の全ての要件)」については、引き続き都度定義・設計・構築する必要がありました。

これらアーキテクチャや導入プロセスにおいて、クラウドERPが登場することで状況が一変します。
一番大きな変化は、サーバー、ネットワークといったインフラ環境準備・構築にかける時間とコストが大きく削減された点にあります。
システム開発においては、当然ながら開発作業する前に、それらを行う環境を準備する必要があります。その手配・発注・構築には相応の時間とコストが掛かり、規模によるもののそれだけで数か月かかることも珍しくありません。インフラアーキテクチャ部分がクラウド化されることで、インフラ環境を意識することなく、必要なタイミングで必要なだけ環境利用できる仕組みが実現し、ERP導入プロセスに大きな影響を与えました。
例えば極端な話では、プロジェクト開始と共に最低限動作するシステム環境を即時構築、業務運用の一部を開始し、要件化と改修を繰り返しながら課題を解消し最適なシステムへ作り上げていく、といった進め方も可能になってきています。

クラウドERPの導入における検討ポイント

前述のように、クラウドERPでは従来の導入プロセスに加えて、より柔軟な導入プロセスも選択することが可能となりました。
もちろん、従来導入プロセスにもメリットがあり、それらとクラウドERP導入プロセスとの違いを理解した上で、適切な導入プロセスを選択することが肝要となります。

クラウドERP(1例としてOracle NetSuite)導入の検討ポイントとしては、「企業規模」「業務要件」「導入コスト」「社内運用体制」があげられます。
それぞれ具体的には以下のような点を考慮する必要があります。

「企業規模」:どれだけの社員数(≒関係部署・利用ユーザー)がいるか。
「業務要件」:業務要件に対してどれだけ適合が必要か。理想的な機能との差異を許容できるか。
「導入コスト」:初期導入コストとしてどの程度予算を確保できるか。
「社内運用体制」:導入・運用における専任者を継続的に社内に設置できるか。

NetSuite導入パターン比較と整理

本項では、NetSuiteにおける導入パターンを「従来型導入パターン」「バランス型導入パターン」「自社導入パターン」の3つに分類し比較・整理します。
前述の導入プロセスと検討ポイントに従い、内容を説明します。

従来型導入パターン

従来型導入パターンは、これまでの一般的なERPパッケージの導入プロセスとほぼ同様の形になります。

まずは、現状業務・システムを分析し、製品標準機能のデモンストレーションを実施したのち、業務要件と製品機能を比較・差異を分析(Fit&Gap)、個別開発する要件を整理します。
そして、動作環境を構築した上で個別開発要件を設計・実装します。最後に、構築したシステム上にて検証・トレーニングを行い、業務運用開始となります。

このパターンでは、目指すべき業務要件・機能を明確に落とし込んでから構築するため、システム運用開始直後の業務適合度合いは高く、業務全体整合を取りつつ、広い業務領域にて一斉に利用開始することが可能となります。一方でプロセスとしては重厚で、他パターンと比較して、導入期間及びコストは非常に多くかかることになります。

一般に、社員数が数百~数千名レベルとなると、業務領域は明確に定義され部署縦割りとなり、業務が複雑化、結果として個別要件が膨らんでいく傾向にあります。
業務適合性が重要視される場合(要件カバーできないと運用できない/競争優位性を失う)、導入コストを許容し、本プロセスを選択することが適切となります。

バランス型導入パターン

バランス型導入パターンは、前述の「従来型導入パターン」と後述する「自社導入パターン」との間に位置づけられるプロセスになります。

まずは、現状業務・システムを分析し、製品標準機能のデモンストレーションを実施するまでは同様となりますが、「要件定義(Fit&Gap)」「カスタマイズ・個別開発」を省略(できる限り最小化)した形です。
以下のようなプロセスを経ることで、ウォーターフォール開発プロセス的な「要件定義(Fit&Gap)」「カスタマイズ・個別開発」を省略しつつ、現実的に業務運用可能かつ導入コストの大幅な低減を実現します。

1. 現状分析をした結果を踏まえて、NetSuite標準機能デモンストレーションを実施
2. NetSuite標準機能+基本テンプレートの範囲内で暫定設定。最低限業務操作可能な環境を構築
3. その環境で業務検証・トレーニングを実施。課題抽出し、開発不要な範囲で追加設定を実施
4. 運用開始(しつつ効率化、追加開発等のカスタマイズを実施)

このパターンでは、運用開始直後の業務適合度合いはそれほど高くはなく、利便性や業務上の改善点や暫定運用も残るものの、早期に利用開始することが可能となります。
早期運用開始によるメリットとして、「導入コスト削減」「改修コスト削減(本当に必要な機能にフォーカス)」「導入効果の早期刈り取り」「運用課題早期洗い出し」といった点があげられます。運用開始後にカスタマイズ・改善活動をすることが前提のプロセスであるため、「システム上にデータを登録し管理できる」という最低限機能が確認できればプロジェクトを前に進めることができます。

一方でデメリットとしては、「どこまで確認したらOKとして前にすすめるか」「いつ運用開始できるかコミットしづらい」「想定以上にコストが膨れるリスクがある」といった点が挙げられます。
これらに対しては、導入ベンダー側のプロジェクト推進力、導入企業側の関係者ネゴシエーション力、をもって対応する必要があります。
また、NetSuite標準機能設定だけでは現実的に業務運用に耐えられないケースが多く、何らかの基本業務テンプレート(導入ベンダー独自のノウハウ)が求められる点については注意が必要です。

この導入パターンは、要件とコストのバランスをとることができ、予算をそこまで潤沢に確保しづらいであろう、社員数が数十~数百名程度の企業規模が一番マッチするものと考えられます。
まずは利用開始を優先しその後に段階的に改善・最適化、という点を許容する(関係者を説得する)ことができるのであれば、最適な導入プロセスに成り得ます。

自社導入パターン

最後に説明する、自社導入パターンは、前述2つの導入プロセスとは若干位置づけが異なります。

前述の2つの導入パターンは、あくまで導入ベンダーがプロジェクトをリードし作業を実施していくものとなりいますが、自社導入パターンは、ユーザー企業側が導入主体を担います。
製品標準機能のデモンストレーションを実施したのちは、導入ベンダーが標準設定のまま(特にユーザ要件は考慮しない)の環境を構築し、ユーザー企業へ引渡します。
その後、ユーザー企業側で機能習熟しつつ設定作業等を行い、必要な設定ができたタイミングで運用を開始します。

このパターンでは、当然導入までの期間・コストは最小限で済み、運用開始できる状態にできれば大きなメリットを享受できます。
製品研修受講や、マニュアル、NetSuite技術サポート、等の各種支援を受け導入を進めることで、導入ベンダー都合に左右されず、ユーザー企業側でプロジェクトを進めることができ、運用開始後もいわゆる導入ベンダーロックインの懸念は薄くなります。
しかしながら、そのためには「業務全体を把握した社員の確保」「導入・運用を行える専任要員の確保」「NetSuite操作・設定スキル習得」といったハードルを越える必要があります。
実際問題としては、上記をユーザー企業のみで行うことは難しいことが多く、導入ベンダーの追加サポート(業務委託での支援等)を受けてプロジェクトを進めるケースが大半となります。

企業規模が小さく(数名~数十名)とにかく最小限のコストで導入したい、将来を考えて自社主体で進めていきたい、という状況の場合に選択するパターンとなるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
「従来型導入パターン」「バランス型導入パターン」「自社導入パターン」それぞれにメリット・デメリットがあります。
企業規模や、業務要件、導入コスト、体制といった点を整理することで、自社にとって最適な導入プロセスを選択することができるようになります。

実際には、これらパターンのいずれかをベースにしつつ、各社状況に応じて最適なプロセスを定義し、プロジェクトを推進していきます。
導入ベンダーによってもNetSuite導入プロセスはそれぞれ異なります。導入ベンダーの得意不得意も考慮することで、よりリスクを低減しつつ効果的な導入プロセスになるでしょう。
本稿が貴社クラウドERP導入の参考になりましたら幸いです。

その他、Oracle NetSuiteの特徴や詳細については、こちらも参照、お気軽にお問い合わせください。

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